暗記しなくてよい三角関数の公式

大学受験

教科書や参考書の三角比・三角関数の単元を学習していて「こんなにたくさんの公式覚えられない!」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

余角90θ)、補角180θの公式をはじめ負角θ)、2倍角2θ)、3倍角3θ)……。

さらにはθ+90型やθ+180の公式もありますよね。

ほとんどの高校生や受験生にとっては頭を抱えてしまうような量です。

しかし、結論としてはこれらの多くの公式を覚える必要はありません。

これらの公式は、三角関数の加法定理からすべて導くことができるのです。

覚えなくてもよい公式

加法定理から導出することができる公式を紹介しておきます。

これらの公式は無理に覚える必要はありません

余角90θの公式

sin(90θ)=cosθ

cos(90θ)=sinθ

tan(90θ)=1tanθ

補角180θの公式

sin(180θ)=sinθ

cos(180θ)=cosθ

tan(180θ)=tanθ

負角θの公式

sin(θ)=sinθ

cos(θ)=cosθ

tan(θ)=tanθ

2倍角2θの公式

sin2θ=2sinθcosθ

cos2θ=cos2θsin2θ=2cos2θ1=12sin2θ

tan2θ=2tanθ1tan2θ

3倍角3θの公式

sin3θ=3sinθ4sin3θ

cos3θ=4cos3θ3cosθ

θ+90型の公式

sin(θ+90)=cosθ

cos(θ+90)=sinθ

tan(θ+90)=1tanθ

θ+180型の公式

sin(θ+180)=sinθ

cos(θ+180)=cosθ

tan(θ+180)=tanθ

これらを一つひとつ暗記するのは正直なところとても難しいです。

そして実際、私もほとんど覚えていませんでした。

それは、これらの公式がすべて「三角関数の加法定理から導出できるからです。

覚えておきたい公式:加法定理

三角関数で覚えておきたい公式は「加法定理」です。

これさえ知っていれば、先ほど紹介した多数の公式を導くことができます。

三角関数の加法定理

sin(α±β)=sinαcosβ±cosαsinβ

cos(α±β)=cosαcosβsinαsinβ

tan(α±β)=tanα±tanβ1tanαtanβ

この3つの公式を覚えておけば、余角(90θ)や倍角、3倍角など、たくさんの公式をすぐに導き出すことができるのです。

では、実際に試してみましょう。

加法定理から公式を導いてみる

余角・補角の公式の導出

余角(90θ)、補角(180θ)の公式は、加法定理を用いて簡単に導くことが可能です。

例としてcos(90θ)について考えましょう。

三角関数の加法定理cos(αβ)=cosαcosβ+sinαsinβα=90β=θを代入するだけです。

cos(90θ)=cos90cosθ+sin90sinθ=0cosθ+1sinθ=sinθ

このように、加法定理だけ使ってcosの余角90θ)の公式を導出することができました(ただし、sin90=1cos90=0であることを用いました)。

sintan補角180θの公式でも同様です。

負角の公式の導出

sin(θ)cos(θ)tan(θ)などの負角(θ)の公式も、加法定理を用いることによって導出することができます

ここではtan(θ)を例に挙げます。

加法定理を適用できる形にするため、θ0θと変形し、次のようにします。

tan(θ)=tan(0θ)

tanの加法定理をおさらいしておきます。

tan(αβ)=tanαtanβ1+tanαtanβ

このtanの加法定理にα=0β=θを代入します。

tan(θ)=tan0tanθ1+tan0tanθ=0tanθ1+0tanθ=tanθ1=tanθ

以上のように、tanの負角θの公式を導き出すことができました(ただし、tan0=0であることを用いました)。

sincosの負角(θ)の公式も同じ要領で導くことが可能です。

ややトリッキーでしたが、θ0θと変形するのがミソでした。

2倍角の公式の導出

2倍角の公式は、加法定理から簡単に導くことができます

たとえばsin2θを考えてみましょう。

ただ、このままの形では加法定理を使うことができません。

しかし、次のように見方を変えることで加法定理を使うことができるようになります

sin2θ=sin(θ+θ)

このように2θθ+θという形に分けることで、加法定理を適用できるようになります。

三角関数の加法定理sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβに、α=θβ=θを代入してみましょう。

sin2θ=sin(θ+θ)=sinθcosθ+cosθsinθ=2sinθcosθ

以上のように、sinの2倍角の公式を導出することができました

costanの2倍角の公式も同じ要領で導出することができます。

2θ=θ+θと見方を変えることがポイントでした。

3倍角の公式の導出

3倍角の公式も加法定理から導くことができます

例としてsinの3倍角の公式を導出してみましょう。

sin3θの形のままでは加法定理を用いることができないので、2倍角のときと同様に3θという部分を変形することを考えます。

そこで3θ=θ+2θと変形すると、次のようになります。

sin3θ=sin(θ+2θ)

加法定理sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβα=θβ=2θを代入してみると、次のようになります。

sin3θ=sin(θ+2θ)=sinθcos2θ+cosθsin2θ

sin2θcos2θという部分が出てきたので、2倍角の公式を用います(2倍角の公式も加法定理を用いて導き出すことができることは、先ほどご説明しました)。

2倍角の公式をおさらいしておきます。

2倍角2θの公式

sin2θ=2sinθcosθ

cos2θ=cos2θsin2θ=2cos2θ1=12sin2θ

この2つを代入して整理すると、次のようになります。

sin3θ=sinθcos2θ+cosθsin2θ=sinθ(12sin2θ)+cosθ2sinθcosθ=sinθ(12sin2θ)+2sinθcos2θ

ここで、sin3θsinθだけで表すため、三角関数の相互関係sin2θ+cos2θ=1を用いましょう。

sin2θ+cos2θ=1を変形し、cos2θ=1sin2θを代入して整理します。

sin3θ=sinθ(12sin2θ)+2sinθ(1sin2θ)=sinθ2sin3θ+2sinθ2sin3θ=3sinθ4sin3θ

以上のように、sinの3倍角の公式を三角関数の加法定理を用いて導出することができました

その他の公式の導出

θ+90型やθ+180型の公式も、三角関数の加法定理を用いて導くことができます。

ここでは例としてcos(θ+90)を考えてみましょう。

もはや説明するまでもないかもしれませんが、加法定理cos(α+β)=cosαcosβsinαsinβα=θβ=90を代入するだけです。

cos(θ+90)=cosθcos90sinθsin90=cosθ0sinθ1=0sinθ=sinθ

このように、θ+90型の公式やθ+180型の公式も、三角関数の加法定理を使って導き出すことができます

まとめ

今回のまとめです。

  • 三角関数の公式をすべて覚える必要はない
  • 加法定理さえしっかり覚えていればそこから多くの公式を導くことができる

大学入試(特に共通テスト)ではスピードも求められます

スピードアップのため、使う場面の多い公式(2倍角など)は覚えておいてもよいでしょう。

しかし、正確に覚えない限り公式暗記は失点の原因です。

模試や定期テストで公式を間違えた経験のある人は、今回紹介した方法をぜひ実践してみてください。

余談ですが、θに対して、90θを「余角」、180θを「補角」、θを「負角」とよぶそうです。

私もこの記事を作成する過程で初めて知りました(入試ではこの知識がなくても問題ないと思われます)。

このような名称を知らない読者も多いかと思ったので、この記事では「余角(90θ)」などのように、括弧書きで補足を加えるようにしました。

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